「漢文法基礎」より。

そこで考えた。どうしてこんなクフウのないタイクツな本が出るのか、と。で、原因がつかめた。著者の高校は東大進学者が多いので有名である。そこで出版社は、この高校になにやら秘術があるんではなかろうか、という受験生心理をとらえて著者に起用したのだろう。だから別にすぐれた力を持つ著者というわけではない。にもかかわらず、著者はトクトクとして説明している。それを読んでいるうちに、ああ、この人はクロウがたりないな、と思った。だいたい、その高校の生徒は、はじめから質の高いのを集めている。だから、教師が少々タイクツな公式的説明をしても、なんとかのみこんでしまう。楽なもんだ。というわけで、教師はデキの悪い生徒に教えるクフウというものをしなくなる。クロウが足らんわけである。そこの高校生は、先生が覚えなさい、と言えば、ハーイとすぐに覚えてしまう力がもともとあるのだ。そういう気楽なところで気楽に教えた結果にすぎない。